2006年10月5日木曜日

とりあえず、『走れメロス』を読み返せ

オレステス東京公演の最後の週に、父親が見にきてくれました。
そのヨル遅く に電話がかかってきた。俺の芝居へのダメ出しだった。役者を志してやっと10年経ったが、こんなことは初めてだ。いや、人生においても、いままで自分の進 路に関して何一つ云わずに黙っていたから、生まれて初めて、親父から息子に小言を、大先輩から後輩にアドバイスを、そんな内容の電話でした。
その 内容を細かく思い出すよりも、まずやはり驚きの余韻が未だ有り、そこからやってくる感謝の気持ちでいっぱいです。親父は俺に、簡単に言えば“オマエはそん なもんじゃない筈だろ、そんなタマじゃない。親父の俺が云うんだ、間違いない。ムスコよ、もっともっと頑張れる筈だ、理屈じゃない、とりあえず、やれ!”
今 日という芝居がすべていいワケがない。そのことを常に心がけて取り組んでいたはずの自分だが、さらに厳しく、心強く投げかけられました。親父と息子の思い 出は自分にとって皆無に近かったのだが、この電話からのメッセージは先輩からとしてではなく、それ以上にある親父としての声だと感じ聞いていました。
初 めてかもしれないという親父からの肉声。“芝居とか演技とか役者とか、どーでもいい、とにかくユキヤ、生きろ、もっと生きろ!”俳優としてはずっとずっと 下の後輩の俺は、聞きながら大先輩の具体的なダメ出しを真摯に受け止め、後輩として“ありがとうございます”と返事をし、その瞬間のヒトトキは息子とし て、親父の息子でよかったという念が溢れてきました。またさらにチューンUPしてエンジンが大きくなったかな、ならざるをえないし、・・・ハァー、と一つ ため息しても、あしたがあしたもやってくる!